虐待ゼロの世界へ│社会問題と向き合う株式会社RASHISAが見据える未来

世界に暗く大きな影を落とし続ける「虐待」の二文字。2019年度に児童相談所が対応した数だけでも、19万3780件に上るとされています。1990年からスタートした同統計は、29年もの間「最多記録を更新し続ける」という、悲しい記録を樹立してしまいました。

参考:児童虐待19万3000件 全体・増加数とも最多、厚労省

日本には、虐待をはじめとした「福祉や教育では切り込めない社会問題」が蔓延っているように思えます。今回は、「虐待」というナイーブな領域に「事業」という形で切り込み続けている、株式会社RASHISAの岡本代表にお話を伺いました。

起業を志したきっかけとは

RASHISAを立ち上げられたきっかけについて、お伺いしてもよろしいですか?

小野澤

岡本さん

ぼくはもともと、小学2年生から高校3年生まで、ずっとプロを目指してバスケットボールをやっていたんですが、高校最後の年に、プロになる夢を諦めてしまいました。その時に出会った高橋歩さんの「毎日が冒険」という書籍がきっかけで、起業家を志すようになったんです。

岡本さん

起業家になると決めて大学に進学し、様々なチャレンジを経験してきました。そんなある日に、とある方から「侍になりきれていないよね」と指摘されたんです。その言葉をきっかけに腹を括ったぼくは、2017年の1月に株式会社RASHISAを立ち上げました。

起業後は、福岡で九州の就活生とベンチャー企業のマッチングイベントを開催する、新卒領域での事業をスタートさせた株式会社RASHISA。

2019年には「キャリアアドバイザードットコム」という事業を新たに立ち上げますが、その数ヶ月後にはキャリアアドバイザードットコムを事業譲渡。そこからRASHISAは大きく路線を変更し、現在取り組んでいる虐待領域へとピボットすることになりました。

一意専心、虐待領域へ舵を切る

なぜ事業を転換されたのでしょう?

小野澤

岡本さん

自分自身やきょうだいが厳しいしつけを受けていたことなどもあり、虐待問題への関心はもともと強かったと思います。でも、すぐにどうとは考えていなくて、20代は社会的信用や資金力を蓄えて、30代になってから虐待問題を解決する事業に取り組もうと考えていました。20代の今はキャリアアドバイザードットコムを育てていこうと思い、資金調達に向けて動いていたある日、転機となる出来事がありました。

岡本さん

ある経営者の方とお話しする機会をいただいて、初めは投資を受けるつもりでお話しに行ったんですが、その中で「おかしょー君は本当は何がしたいの?」と尋ねられたんです。
なるほど…。

小野澤

岡本さん

ぼくは「虐待関連の事業をやりたい、20代は力がないから、30代になってから取り組もうと思っています」とお答えしました。そうしたら、その方が「絶対に今からやったほうがいいよ」と背中を押してくれて。

岡本さん

調達したい資金はあと数百万円、というところだったのですが、「虐待領域で事業を立ち上げるのなら、それ(調達したい資金の残り)はぜんぶ僕が出すよ」とまでおっしゃっていただいた。

岡本さん

それならやるしかない、ということで、キャリアアドバイザードットコムを手放して、虐待領域で新たに事業を立ち上げることを決意しました。その方と出会っていなかったら、今の僕はいなかったと思います。

なぜ、虐待サバイバーへ寄り添うのか

なぜ、虐待サバイバーに寄り添う事業を手掛けるのでしょうか?

小野澤

岡本さん

事業を作る中で「自分たちがやらないと、どの企業もやらないな」と思ったのがきっかけですね。
なるほど、具体的には、どのように寄り添うことを目指しているんですか?

小野澤

岡本さん

もともとは虐待サバイバーの方にお仕事を紹介するエージェント事業に取り組んでいました。応募してくれた虐待サバイバーの方々と関わる中で気づいたのが、彼ら彼女らにとって、正社員として働くことが必ずしもベストではない、ということでした。中には、週5日出勤したり、コミュニケーションを取りながら働くことに苦痛を覚える方もいらっしゃいます。

岡本さん

虐待サバイバーの方々が、在宅でもお仕事ができるように、RASHISAが案件を受注して、仕事を依頼できるようなスキームを作りたい。そう考えて、転職エージェントからシフトしてWebコンテンツ制作の代行業へ舵を切りました。それが今の「RASHISAワークス」というビジネスです。

”RASHISAワークス”という挑戦

RASHISAワークスアイキャッチ

現在取り組んでいるRASHISAワークスについて、詳しくお伺いしてもよろしいでしょうか?

小野澤

岡本さん

RASHISAワークスでは、文字おこしをメインに、記事のライティングや動画作成、経理代行など、在宅で取り組める様々な業務のマネジメントに取り組んでいます。
素晴らしい事業だと思います。その上で、ワーカーさんからはありがたいサービスだと思うのですが、クライアントとなる企業様とのやり取りにおいては苦労されたのではないでしょうか?

小野澤

岡本さん

おっしゃる通り、初めのうちはクライアントの企業様を探すのに難航しました。虐待というものがネガティブに捉えられているので、「本当に納品できるの?」と聞かれたときに、提示できる実績がないと、どうしても案件を受注するのが難しくなります。

岡本さん

そんな中でも、少しずつ実績を残して、誠心誠意取り組むことで、ご紹介をいただいたり、リピートをいただいたりして、形になってきました。
お仕事をご依頼いただくために、なにか具体的な取り組みなどはあったのでしょうか?

小野澤

岡本さん

見ず知らずの企業にいきなりお仕事を任せる、というのは難しいと思うので、まずは身近な企業様に、お仕事をご依頼いただけないか相談することからはじめました。

岡本さん

単価は低くても良いので、まずは実績を作りたい、というところが強かったですね。その実績を元に、直接営業へ切り替えていった、という流れです。

RASHISAが社会へ提供する価値とは

では、こうしたRASHISAとの関わりを通じて、虐待サバイバーの方々にどうなってほしいと願っていますか?

小野澤

岡本さん

RASHISAワークスがなくても歩みやすい人生を送ってほしいです。今はぼくたちRASHISAが、ディスコードなどの通話アプリを用いたコミュニケーションや、業務の斡旋、マネジメントを行っていますが、ぼくたちがいなくても社会とつながったり、自分の人生を肯定しながら生きていく力を身に着けて欲しい、と願っています。
自立の第一歩にRASHISAワークスがあり、そこで得た経験や知識を活かして、自身の人生を生きていってほしい、という想いを持ってらっしゃるんですね。では、クライアント企業様に対しては、どのような想いを持っていらっしゃいますか?

小野澤

岡本さん

弊社とのかかわりの中で、虐待問題やソーシャルグッドについて考えるきっかけになっていただければ、と思っています!

RASHISAが見据える今後の未来や展望

それでは、今後の株式会社RASHISAが見据える未来や、具体的なステップについて、差し支えない範囲でお聞かせいただければと思います。

小野澤

岡本さん

ぼくたちは、3つのフェーズで事業を進めていきたい、と考えています。

まず初めはRASHISAワークスを通じて、社会との接続や収入が少ない虐待サバイバーへ、機会や価値を届けたい。次に、虐待サバイバーが生活を営むうえで生じる様々な課題(住居の確保やお金を借りるなどの社会的信用が必要な手続きが踏めないこと)を解決する事業を手掛けていきたいです。

岡本さん

そして最後に、虐待を未然に防ぐための事業を手掛けていきたいです。例えばパートナー間で生じる不和を解消したり、子育ての悩みを解決するサービスを提供したり、といったものを想定しています。
ありがとうございます。では、この記事を読んでいる虐待サバイバーの方にひとことお願いします!

小野澤

岡本さん

虐待サバイバーの方で、この記事を読んでいる方がいるのであれば、ぜひRASHISAワークスを利用してみてください。「稼ぐ」ということも経験できますし、社会やコミュニティとの「つながり」というものも提供できると思っています。ぜひぜひ、お気軽にRASHISAワークスへご連絡ください!
ありがとうございました!

小野澤

まとめ

「あらゆる思想は、損なわれた感情から生まれる。」

かつて、ルーマニア出身の思想家、エミール・シオランは、たった一言で私たちの抱える苦悩や葛藤を肯定しました。

起業家やクリエイターといった生き方を選ぶ方は、自身のつらい経験すら糧にして、その痛みを内包した瞳で世の中を見渡し、この世界の矛盾や虚構の裏に蔓延る悲劇から目を背けるどころか、直視し、分析し、社会の新しい在り方を提示してくれます。

RASHISAが立ち向かう「虐待」という問題は非常に根深く、当時者だけでなく、踏み込んだ者にも痛みを与える、そんな分野であるように感じます。しかし、虐待が生じる原因に目を向けて、一歩ずつ歩みを進めるRASHISAの背中は、虐待サバイバーの方にとって、勇ましく、暖かなものとして映ることでしょう。

RASHISAワークスをはじめの一歩にして、自分の人生を肯定するために、歩き出してみませんか。

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株式会社RASHISA 代表取締役 岡本翔さん

 

おかしょーさん2017年1月株式会社RASHISAを設立。創業後2年半ほど新卒領域で事業を展開し、2019年4月にキャリアアドバイザードットコムをリリース。同年11月に事業売却後、事業をピボットし、虐待問題と向き合うことを決意。現在はRASHISAワークスに注力し、虐待サバイバーと社会を接続するべく奮闘を続けている。

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