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しみこさんに聞く現代社会で見過ごされがちな「気持ちを受け止めること」の大切さ

現代社会には、目を背けたくなるような悲痛な事件が蔓延っています。その一方で、歓喜に心躍るような出来事もあちらこちらで散見されます。それらの情報に触れ続ける中で、私たちは、感情を揺さぶられ続けているのではないでしょうか。

ひとりぼっちの感情を作らないことにスポットライトを当てた気持ちの共有サービス、「いつでもおかえり」をリリースする、株式会社祭。今回は、同社の代表を務める清水 舞子さんに、ご自身の経験を踏まえた「気持ちを受け止めること」の大切さについてお伺いしました。

「悩んでいる人」の根本には”ひとりぼっちの感情”が潜んでいた

もともと、多摩美術大学へ通っていた清水さん。しかし、アートよりもさらに持続可能性の高い悲しみへの解決策を、ビジネスによって提示したいと考え、明治大学への編入を決意します。編入に必要な費用を稼ぐためにも、新宿・歌舞伎町のクラブで働き始めました。

清水さんはこの歌舞伎町時代に得た経験が、今の「いつでもおかえり」に反映されていると教えてくれました。

「私はもともと、歌舞伎町で働いていた時代に、困っている人のそばにいる活動をしていました。でも、わたし一人では頭打ちになってしまう。困っている人が100人集まってしまったら、どうしても対症療法になってしまうと思いました。だから、根本にアプローチをしなきゃいけないと考えたんです」

さらに、人々の悩みと向き合う中で清水さんの中にはある仮説が組み立てられていきました。

「生まれによる格差が悩みの正体であると考えていましたが、悩んでいる方の中には、分かりやすいハンディキャップや環境の格差がない方もいたんです。学歴や資産、環境、機会に恵まれても、生きづらさはなくならないのだと思いました。また、そういった方々には、我慢して、理性的でいなければならない、という感覚が強くあって、それが辛さにつながっていくのだと感じました」

「そのように周囲の人を眺めていると、自分の気持ちを見つめなおして、受け止めることが生きづらさを緩和する一つの方法なんじゃないかと感じるようになりました。そう思って作ったのが”いつでもおかえり”というサービスです」

また、清水さんは、いつでもおかえりを利用してほしい方について、以下のように語りました。

「日常の中で辛さを感じている人に使ってほしいですね。もっと言うと、日常の中で感じた辛さを話す相手がいない人。年代は特に決めていませんが、今のところは大人の方がメインとなっています。20~40代の女性が多いですね。主婦の方や発達障害などのハンディを抱えている方にも利用していただいています。もちろん、男性にもぜひ利用してほしいです!」

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「気持ちの受け止め」が今の世の中を生き抜くカギになる

ご自身の経験から「気持ちを受け止めること」の重要さに気づいたという清水さん。なぜ、気持ちの受け止めが重要なのでしょうか。

「(自分の中に生じた)気持ちを受け止めないと、そのストレスが自分や他者に向いてしまうと思うんです。新卒なら”我慢して3年やり遂げろ”とか、”男だから”、”社会人だから”とか、とにかくラベリングが多いじゃないですか。そうしたラベリングが、本来の自分の感情を抑圧してしまうんです」

「もっと身近な例を挙げると、”満員電車に乗る”という我慢をすることで、そうじゃない人を許せなくなってしまうような感覚です」

被害者はいつか加害者になってしまう。感情を抑圧して生きていくことは、一見すると大人な生き方にも捉えられますが、結局は「生きづらさのしわ寄せでしかない」と清水さんは語ります。

「まずは自分の気持ちを緩めるのが大切なんじゃないでしょうか。我慢している自分を自覚して、本当は何がしたいのかを理解する。そのしたいことを現実にできるかは分からないけど、少なくとも、抑圧して生きるよりは他人にも自分にも優しく生きていけると思うんです」

さらに、清水さんは「いつでもおかえり」を立ち上げるにあたって、参考にした取り組みがあると言います。

「(いつでもおかえりの空気感は)アルコール依存症などの自助会を参考に、言いっぱなし、聞きっぱなしの空間であることを意識しています。批判や評価がない、絶対に攻撃されない空間を作ることで、感情を表出しやすくなりますから」

「もし、悩みを自分一人で解決したい方がいれば、ノートに書くことをおすすめしています。日記に書くのもいいですね。書くときに気を付けてほしいのは、何があったかだけではなくて、その時”どう感じたか”という感情についても一緒に書くことです」

そうした感情を受け止めてもらったり、自覚したりした方は、具体的にはどう感じて、どう変化するのでしょうか。

「まず、自分は怒ってたんだ、悲しんでいたんだ、と理解するところから始まります。そして、怒ったり悲しんだりするのは良くないことだと思っている自分にも気づけます。心の中で否定し続けてきたことを解消できて、そこでようやく素直な気持ちが浮き彫りになります。ぐつぐつとたぎった状態から、楽に生きられるようになるんですよね」

さらに、清水さんが気持ちの受け止めに重きを置く理由の中には、清水さん自身が感情を受け止めたり、受け止めてもらったりしてきた経験が存在していました。

「(私の場合は)無理をして、自分をすり減らしていた時期がありました。その結果、メンタルを壊してしまって。会社のメンバーに対しても、物理的に噛みついたり、”一人で帰るのが寂しいから一緒にいたい”と泣きついたりしていたそうです。でも、その時の記憶はないんですよね」

そんな状態の清水さんを見た会社のメンバーは、優しく、フラットに清水さんの気持ちを受け止めてくれたと言います。

「メンバーが、私が忘れている記憶の内容を教えてくれたんです。『こんなことしていたよ』って。それだけじゃなくて『そんな気持ちにさせてしまってごめんね』と優しく受け止めてくれました。私はそのおかげで立ち直れたと思っています。それに、私もずっとメンバーの感情を受け止めてきたんです。”いつでもおかえり”でやっていることって、実はメンバー間で密にやっていることでしかないんですよね

いつでもおかえりや株式会社祭が見据える未来

清水さんのもとには、いつでもおかえりを利用しているユーザーから様々なコメントが寄せられると言います。

「ここに行けば誰かがいて、居てもいい場所だと思える」

「眠れない夜にいつでもおかえりがあると安心できる」

「安心して過ごせる場所があると日々も安心して過ごせます」

いつでもおかえりが心掛けてきたのは、「心理的安全性の確保」。気持ちを受け止め合うために「言いっぱなし」で否定のない空間づくりを目指しているといいます。

批判や否定を受けずに気持ちを吐露できる環境はそう多くありません。”いつでもおかえり”は心の居場所として、さらに多くのユーザーの拠りどころになっていくのでしょう。ここで清水さんに、今後の展望についてお伺いしました。

「(いつでもおかえりは)困ったな、と感じたときに一番初めに触れる場所でありたい。困っているときは自分が何に困っているのかわからないことがほとんどですから、不安だし、拠り所がないんです。そういう人を、一人ぼっちにしたくない。まず初めに頼られる居場所として、いつでもおかえりが選ばれるようであればいいなと思います」

「また、今は不安や悩みといった感情を受け止めることがメインになっていますが、外部との連携や、具体的な解決策の提示にも注力していけたらいいな、という展望をもって取り組んでいます」

株式会社祭の展望についてもお伺いしたところ、清水さんは力強く次のように語りました。

「社会課題を解決する企業には、NPOやスモール企業が多いのが実情です。私たちもスタートアップなので、資本主義の理屈や勝ち筋でいながら、社会課題を解決するために、両軸の交点でいたいと思っています。R&Dや行政との連携も見据えて、様々な軸の交点に存在するような企業でありたいと思います」

また、”いつでもおかえり”が成長した先の未来についてもお聞きしました。

「いつでもおかえりで獲得したエビデンスをもとに、これまで保険外診療だった治療内容を保険診療の範疇とするよう働きかけたり、中小企業にも産業医を設置するよう働きかけたりしたいです。また、メンタルヘルスのハードルを下げることも目標としては掲げていきたいですね」

快活に語る清水さんの声音から感じた「強さ」には、歩んできた道のりや、そこで経験した全てが宿っているようでした。全身全霊で社会課題の解決に立ち向かう株式会社祭の今後の動向から、目が離せません。

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株式会社祭代表 清水 舞子さん

画像多摩美術大学在学中から、芸術系の古本のせどりや人材紹介など数多くのビジネスの起ち上げを経験。「人が言葉には出さないけど欲しいもの」を仕組みに落とし込むのが得意。中退後は繁華街の夜回り活動と並行してIT分野の開発に従事。それらの経験から”格差の固定”に強い課題意識を感じ、祭incを創業。「生まれや性別に関係なくすべてのひとが自分らしく生きる」世界を願い、日々奮闘中。

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