cotonohaアプリ版はこちらから

【分かりやすく解説】認知行動療法はどんな治療?自分で取り組むおススメの方法もご紹介

治療効果の高さから、今最も注目を集めている精神療法の1つである『認知行動療法』。生きづらさを抱えて辛い思いをしている。ネガティブな状況を変えて新しい自分に変わりたい。そんな願いを抱いている方にぜひ知っていただきたい精神療法です。

日常生活に取り入れて、自分で自分を治療する方法も踏まえて、分かりやすく解説します。

認知行動療法とは?

まずは、認知行動療法とはどのような治療法なのか、概要を解説していきます。

認知行動療法の歴史

認知行動療法は約50年ほどの歴史を持つ精神療法です。

 

1910年代。心理学や精神医学の世界では、人間は「周囲の環境から受ける刺激によって、どのように行動すべきかを学んでいく」と考えるようになりました。その観点から、行動の仕方を学びなおせば、本人が問題だと感じる行動や症状を変えられると考えた『行動療法』が生み出されました。

 

時が経ち、1950年代の終わり。一部の心理学者たちは、行動療法があまり人間の心の動きを考慮しないため、問題だと考えました。そこで『認知療法』という精神療法が生み出されました。認知療法では、「人間の気分は、その人が状況をどう認識するか(認知)によって変化する」と考えます。もし本人が問題だと感じる行動や症状があるなら、本人の「物事の捉え方・認識の仕方」を変えることによって、行動や症状が変わると考えたのです。

 

そして、1970年代。行動療法と認知療法をかけあわせた『認知行動療法』が生み出されました。アメリカの精神医学者であるアーロン・ベック氏が、うつ病患者への治療法として開発しました。

 

その後、うつ病への治療効果はもちろんのこと、不安障害やストレス関連の障害、パーソナリティ障害、摂食障害、統合失調症など様々な精神疾患への治療・再発予防効果が確認され、欧米を中心に全世界に広まっていきました。精神疾患だけでなく、日常で感じるストレスや夫婦問題、教育現場での問題など様々な場所で認知行動療法が使われるようになっています。

 

日本では1980年代後半から認知行動療法が注目されるようになり、研究も積み重ねられてきました。

 

認知行動療法の基本的な考え方 

認知行動療法は、他者や出来事→自動思考→感情・行動・身体がそれぞれ影響しあうことに注目します。

 

人間は何かの出来事が起こったとき、ある考え(認知)やイメージを瞬時に思い浮かべます。その考えやイメージのことを「自動思考」と言い、人間の気分や行動の大きな要因になると考えています。

例えば、「女性にモテなければ意味なんてない」という強い思い込み(スキーマ)を抱いている人は、失恋によって自動的に「僕に意味なんてない…!」と思考してしまうでしょう。

スキーマの紹介画像

しかし、強い思い込み(スキーマ)がない方は「この女性は僕には合わなかったんだなぁ。悲しいけれど、切り替えよう」と思考が進んでいきます。

スキーマの紹介画像

認知行動療法は、この両者の違いに着目し、何か困った症状や辛さを抱えているとき、それは「認知の歪み」が原因になっていると考えます。認知の歪みとは、出来事や状況を何も根拠がないのに極端に思い込んでしまうことです。困った状態を変えるなら、認知の歪みに気づき、物事の捉え方を変えれば良いと考えるのです。

認知行動療法は、どんな治療を行うの?

ここからは、認知行動療法で具体的にどのような治療をおこなうのか解説します。

認知行動療法では、具体的にどんな治療が行われるのか

認知行動療法の治療法は、うつ病や強迫性障害などそれぞれの精神疾患ごとに用意されているマニュアルに沿って決まります。このマニュアルは、大学などの研究機関の研究に基づいて作成されています。

例えば、うつ病で認知行動療法を行う場合、治療全体の流れは6つのステージに分かれています。治療期間は最低でも16週間が必要で、最初の段階であるステージ1では、うつ病の症状や認知行動療法に関して治療者とともにクライアント(患者)が学習します。

次のステージ2では治療目標や活動スケジュールを治療者と話し合います。このように、十分に認知行動療法への理解が深まった段階で、治療者とクライアントが一緒に治療を進めていくのが基本的な流れです。

参考:厚生労働省HP「うつ病の認知療法・認知行動療法 治療者用マニュアル」

また、認知行動療法の歴史でみたように、この治療法は2つの手法がかけ合わさって生み出されたものなので、様々な手法があります。

<認知行動療法の手法>

 

・エクスポージャー法(暴露療法)

不安だったり苦手な対象を、まずはレベルの低いものから経験し、少しずつ慣れることで治療していく方法

 

・リラクセーション法

体の状態を行動でリラックスさせて、不安な気持ちを和らげる方法

 

・認知療法

人は自動思考のもとになる、スキーマ(無意識)を持っています。このスキーマが現実の状況を反映せずに偏っていると、自動思考や感情・行動にも影響が出てきます。例えば、現状何も失敗していないのに、「私はダメ人間だ」というスキーマを持っていると、どんどんネガティブ思考の沼にはまってしまうことがあります。認知療法ではスキーマの偏りを発見し、それを変えていくためにコラム法などを活用して治療を行います。

 

・アクセプタンス&コミットメント・セラピー

アクト(ACT)と呼ばれるこの治療法は、比較的新しい手法です。思考や感情をコントロールせず、あるがままに湧きおこったり、自然に消えたりして良いと考えます。自分が今感じていることを受け止めて、行動につなげていくことを大切にしています。

 

ほかにも、論理療法やメタ認知療法、弁証法的行動療法、行動活性化療法、問題解決療法、スキーマ療法、EMDR、ソーシャル・スキル・トレーニング、アサーション・トレーニングなど多様な種類があります。

きちんとした治療を受けるなら病院へ

認知行動療法を開始したい場合は、精神科や心療内科のある医療機関を受診することが必須です。認知行動療法はどの医療機関でも実施しているわけではないため、事前に受診したい医療機関の治療内容を確認しておくと良いでしょう。

 

治療を開始する際は、まず現在の悩みや問題だと感じていることを医師やカウンセラーに伝える面談が行われます。その後、治療目標やスケジュールの設定など、それぞれの疾患と症状に応じて進めていきます。

 

初診は電話やネットからの予約が必要な医療機関が多いので、受診を考えている医療機関の初診の受付方法をよく確認してみてください。

 

また、精神科や心療内科をネットで検索する際、「都道府県名+精神科+一覧」と検索すると、多くの場合、一般社団法人や自治体などがまとめた精神科のリストが出てきます。例えば、東京都であれば「一般社団法人 東京精神神経科診療所協会」が、所属する医療機関をこだわりの条件から検索できるようにしています。

自分に合った病院を探すのはなかなか大変ですが、まずはこのような検索から始めてみましょう。

参考:東京精神神経科診療所協会HP

認知行動療法を受けると、治療費はどのくらい?

治療費は、保険適用となるか自由診療かによって金額が大きく異なります。

 

保険適用となるのは、一定の研修を受けた医師やカウンセラーが厚生労働省のマニュアルに沿って認知行動療法を行う場合に限られています。気分障害、強迫性障害、社交不安障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、神経性過食症、薬物依存症に適用されます。

 

保険適用となる場合は、初診で3000円前後、再診以降は1500円前後で治療を受けられる医療機関が多いようです。健康保険が適用されない自由診療の場合は、1回あたり8000円前後の費用がかかります。

 

医療機関によって治療にかかる費用に大きな幅があるため、事前にしっかりと確認しておくと良いでしょう。

 

認知行動療法が行われるのは、どんな症状や状態?

認知行動療法は、どのような症状・状態に効果があるのでしょうか。詳しく解説します。

認知行動療法が取り入れられる疾患や状態は?

認知行動療法は、うつ病や不安障害を抱えている方に対して薬物療法と同じような効果があると注目されています。世界的に見ても、うつ病、パニック障害、強迫性障害、全般性不安障害、PTSDなどに高い効果が報告されています。

 

薬物療法よりも長期的に効果が持続すると証明されているため、精神疾患の再発予防にも役立つ治療法です。また、認知行動療法のみの治療でも効果はありますが、薬物療法との併用も可能です。薬物療法と併用する場合、治療効果はさらに高まるというデータもあります。

 

認知行動療法のメリット・デメリット

それでは、認知行動療法にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?

 

まず、メリットとしてはこのようなことが考えられます。

 

<メリット>

・物事の捉え方を学び、変えていくため、辛い症状の再発予防に効果がある

・治療がうまくいった場合、薬物治療と同じような効果を得られる

・認知行動療法のみでも、効果があることが証明されている

・長期的にみて治療の効果が継続しやすい

反対に、デメリットはこちらの通りです。

<デメリット>

・物事の捉え方を変えるには時間がかかるため、即効性はない

本人が意識して取り組まねばならない部分がある

・まれに認知行動療法が合わず、効果が出ない場合がある

認知行動療法は、治療効果が出るのに少し時間がかかります。また、自分自身で意識してコラム法などに取り組んでいかなければ、治療が完成しません。しかし、辛さの原因となっている「認知」に働きかけていくため、治療が成功すれば、再発予防の観点からも非常に治療効果が高い精神療法と言えます。

 

症状や辛さの原因などは、各個人によって状況が大きく異なります。メリット、デメリットを理解したうえで、医療機関を受診している場合は主治医の意見を聞きながら、自分に合った治療法を選択するのが良いでしょう。

参考:「心の健康」│厚生労働省

自分でも認知行動療法に取り組める?

ここからは、自分で認知行動療法に取り組むための具体的な手順や勉強法を紹介します。

認知行動療法の手法を、日常生活に取り入れることは可能!

認知行動療法は、普段の生活の中に取り入れられます。この治療法のポイントは、「自分自身の物事の捉え方・考え方=認知」を変えていくこと。コラム法のように、認知行動療法の治療法の多くは自分自身で認知のトレーニング行い、治療効果を生み出すものなので、日常生活の中で取り組める方法が複数あります。

たとえば「上司が怖い」といったストレスの「原因を変える」のは難しいですが、自分の考え方を変えることは可能です。必要以上に恐がっている自分に気づいたり、怖いことを必要以上に重く捉えていたことに気づいたりすると、それだけでも視界が開けてくるものです。

日常生活に認知行動療法の考え方や手法を取り入れることで、ストレスを軽減させる効果も期待できます。

 

認知行動療法のやり方を学ぶのにおススメの本

一般の人でも認知行動療法について気軽に学ぶことができる本が沢山あります。ワークがついているもの、マンガで解説しているもの、新書、資格試験のテキスト形式で書かれているものなど、様々な種類の本があるため、自分が一番読みやすいものを選ぶと良いでしょう。

 

①「こころが晴れるノート:うつと不安の認知療法自習帳」(著:大野裕、出版社:創元社)


こころが晴れるノート うつと不安の認知療法自習帳

国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター所長を務めた、認知療法の日本における第一人者・大野裕医師が書いた本です。認知行動療法の考え方が分かりやすく解説されており、ワークもついています。文章量もそこまで多くないため、気軽に読み進めることができ、認知行動療法の実践には適した書籍です。

②「はじめての認知療法」(著:大野裕、出版社:講談社現代新書)


はじめての認知療法 (講談社現代新書) 

認知療法の入門書としておすすめの一冊です。本を読むことが苦ではなく、認知療法について一通り学びたい方はこちらの新書を読んでみると良いでしょう。こちらも認知療法の第一人者である大野裕医師が書いた書籍です。

③「マンガでやさしく分かる認知行動療法」(著:玉井仁、その他:星井博文、出版社:日本能率協会マネジメントセンター)


マンガでやさしくわかる認知行動療法

マンガと解説文で学べる書籍です。まずはマンガで認知行動療法の流れを学び、具体的な方法やポイントが解説文で記載されているため、より深く理解することが可能です。

④「ケアする人も楽になる認知行動療法入門BOOK1」(著:伊藤絵美、イラスト:matsu、出版社:医学書院)


ケアする人も楽になる 認知行動療法入門 BOOK1

看護師など、患者をケアする立場の方に向けて書かれた認知行動療法の解説書です。しかし、一般の方でも理解できるほど分かりやすく書かれているため、ストレスマネジメントに役立てたい方にもおすすめな1冊です。

⑤「図解 やさしくわかる認知行動療法」(監修:貝谷久宣・福井至、出版社:ナツメ社)


図解 やさしくわかる認知行動療法

イラストやワークを使って、認知行動療法の流れや考え方、実践方法を解説した本です。ワークシートもついており、気軽に取り組むことができます。

 

⑥「自信をもてないあなたへー自分でできる認知行動療法」(著:メラニー・フェネル、出版社:CCCメディアハウス)
自信をもてないあなたへ――自分でできる認知行動療法

「自分に自信が持てない」という状態を1つの切り口として、認知行動療法を活用して自分の考え方や行動を変える方法を学ぶことができる書籍です。そもそもなぜ自分に自信が持てなくなってしまうのか、自己評価が低いのかというところから解説しており、認知行動療法の入門書として読むのもおすすめの1冊です。

認知行動療法の手法を取り入れたヘルスケアアプリも

最近では、認知行動療法の手法を使った様々なヘルスケアアプリがリリースされています。いつも持ち歩いているスマートフォンだからこそ、気分の変化を感じた時に簡単に記録をつけることができます。手軽に自分の思考の癖やストレスの原因などに気づけるため、アプリを活用して自分の認知を客観視するのもおすすめです。

①思考日記

 認知行動療法で行う思考の記録を、気軽にできるようにしたアプリ。自分がどんな気分で、そこにどんな認知の偏りがあると言えるかをリストから選んで記録をつけていくため、考えや感情の理由、癖や偏りなどを客観的な視点から分析・理解するのに役立ちます。

iOSには非対応なので、現状はandroidユーザーのみが利用できます。

参考:思考日記

②Happify

マインドフルネスや認知行動療法の分野の研究者や専門家が開発したアプリ。アプリ内の機能をすべて使うには有料版を利用する必要があります。このアプリを定期的に利用しているユーザーが2か月以内に効果を感じているというデータもあり、効果が期待できるアプリといえます。

参考:Happifi(iOS版 android版

③Awarefy

朝と寝る前、そして感情を感じた時に、その時の気分の記録をつけられるアプリです。感情の種類と程度の数値化、その時の状況のキーワードをタグ付けすることで、後から振り返りやすい記録をつけることができます。また、気圧の変化もチェックできるため、自分がどういう状況でその気分になりやすいのかを冷静に分析することができます。

参考:Awarefy

まとめ

様々な症状や状況に高い効果が期待できる、認知行動療法。ストレスの解消やネガティブ思考の軽減をしたい時にも独学で取り組むことは可能ですが、きちんとした治療に取り組みたい場合は、必ず医療機関を受診するようにしてください。

辛い状況を変える第一歩として、この記事がお役に立てたら幸いです。

執筆者:市岡光子

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。